柿舞わす

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ジャンルの人気度はコミケのスペース数では計りにくい

今年の冬コミコミケット93の当落が先日発表されました。大体この時期になると話題になるのが、各ジャンルの盛衰の話題です。このジャンルは以前よりもスペース数が減ったから衰退しているとか、このジャンルはスペース数が増えたから盛り上がっているという具合です。

実際、今年の冬コミでは艦これジャンルが減少して、型月ジャンルが大きくスペース数を増やしています。艦これの衰退が叫ばれる事も多いことでしょう。コミケのスペース数は、特に二次創作において、ジャンルの盛衰を示す指標として扱われることがとても多いです。

しかし実際のところ、コミケのスペース数がその時点でのジャンルの盛衰を表すかというと私は疑問です。スペース数という指標はかなり誤差の大きい指標だと私は思っています。

理由は3つあります。


一つ目の理由は、サークル参加は原則1サークルで1ジャンルを扱うのに対し、一般参加は概ね複数のジャンルを回るという事です。サークル参加者は、その時に一番作品を出したいジャンルに申し込みますが、本を買う一般参加者は、複数のジャンルの作品を買うのは当たり前です。

例えば仮に、サークル参加者は一番好きなジャンルに申し込み、一般参加者は一番目から三番目に好きなジャンルの本を買うとします。すると、多くの人が一番目ではなく二番目や三番目として好むジャンルは、スペース数が少なくても購入者の盛り上がりは十分あるという事になります。寧ろ、供給が少なく需要が多いことになり、頒布作品の平均的な注目度は寧ろ上がるケースもあり得ることでしょう。二次創作のジャンル人気は流行に影響されやすいので、【一番好きなジャンルはその時点で公式作品が流行しているジャンル、二番目は少し前に公式作品が流行したジャンル】というパターンの人はかなり多いはずです。


二つ目の理由は、作品の作り手にとって、読みたいものと書けるものには乖離があることが多いという事です。私も描き手としては、自分では中々話は思いつかないものの話を読むのは好きというジャンルは少なからずあります。

ギャグ漫画を読むのは好きなものの、ギャグ漫画を思いつかないという人は多いことでしょう。描き手にもそういった人は相当数いると思いますし、そういう人が別の趣味として百合漫画を描いていたなら、ギャグが読みたいけど百合をメインに書いている人ということになり、書けるものと読みたいものの乖離ということになります。そして、それは漫画の方向性に限らず、二次創作ジャンルについても言えることでしょう。


三つ目の理由は、申し込み時期の問題です。8月の夏コミの申し込み時期は2月、12月末の冬コミの申し込み時期は8月です。平均で、5ヶ月程度は申し込み時期と参加時期にタイミングのズレがあります。申し込む時点では本を出すのはかなり先という事になりますので、当落発表のタイミングにそれを見ても、その時点でのジャンルの人気とはかなり乖離があります。加えて、時期が離れているということは、描きたいジャンルの中でもある程度の頒布数が見込めるジャンルに申し込むというサークルは、「まだかなり先のコミケの時期でもこのジャンルなら頒布数は見込めるだろう」という安定感や話題性のあるジャンルを選びがちです。そうなると、「そろそろ衰退し始めるか?」という噂のあるジャンルは、過剰にリスクを見込まれ、申し込みを敬遠される事が多くなります。


何かと、コミケでのジャンルの申し込み数のみを見て、やれ「オワコン」だのと騒ぐ声は多いです。恐らく、そうやって騒ぐのは、元々そのジャンルのことを嫌っている場合が多いでしょう。しかし、そういった騒ぎの声というのも、スペース数と人気度が乖離しうるということを考えると、あまり根拠のあるものとは言えません。

一定数売れなければサークルとして活動しにくいケースというのはありますし、本を作ったからには出来るだけ多くの人に見てもらいたいものですから、ジャンルの盛衰が気になる人は多いと思います。しかし人間の気持ちの動きというのは中々表面的な数字だけでは見えてこないことが多いです。ですので、自分のジャンルのスペース数が減っていたからと、あまり悲観的になる事はないと思います。