柿舞わす

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大魔王なのに角がない、ピッコロ大魔王のデザインについて

最近ドラゴンボールにハマっています。ハマっているというと、「今更?」といった感じでしょうが、最近、鳥山明氏の絵の描き方について、以前とは違う見方が出来るようになってきたようで、デザインや絵について面白いものを探すことにハマっているという感じです。

ドラゴンボールは、今となっては「バトル漫画の時代を作った作品」と見なされており、戦闘力の数値化やインフレ、強敵が仲間になっていく流れなど、後の少年誌バトル漫画によくある要素を広く普及させた作品といった定評があると思います。ある種、「現代のバトル漫画のオーソドックスが詰まっている」と見られている部分もあるでしょう。

恐らく、その見方は正しいのでしょうが、ドラゴンボールを大人になって読んでみると、意外とオーソドックスから離れた部分が見つかったりします。もしかしたら、作者の鳥山明氏が意図的にオーソドックスから外した部分もあるのではと感じます。そういった事に注目して読んでみると、これが中々面白いのです。


ピッコロ大魔王のデザインについて考えてみます。ピッコロ大魔王と言えば、悟空少年期における、最大の敵ですね。青年期以降のドラゴンボールがバトル物にシフトしていくことを考えると、冒険物としてのドラゴンボールにおけるラスボスと言える立ち位置のキャラです。

さて、「冒険少年である悟空が、その少年期の冒険の締めくくりとして戦う最大の敵、しかも『大魔王』」…普通に考えるとどんなデザインにするでしょうか?恐らく、9割以上の人は、いかにも悪魔らしい、牛やヤギのような威圧的な角をデザインに盛り込むのではないかと思います。しかし、ご存知のとおり、ピッコロ大魔王には、角がありません。あるのはひょろっと生えたような触角だけ…いかにも魔王然とした感じとは程遠い、丸いシルエットの頭です。

この辺りに、私は鳥山明氏らしい、意表を突いたキャラデザの魅力を感じます。ある程度意図的に、非オーソドックスなキャラデザをしたのではないかとも感じます。もしかしたら、牛魔王とデザインがかぶらないようにしたりとか、もしくはドラゴンボールへの影響の大きかったであろうカンフー映画の敵役のイメージがあったといった事もあったかも知れません。ただ、もし意識的でなくても、鳥山明氏の感覚は、「非オーソドックス」が染み付いていたのではないかなあと思うのです。


ピッコロ大魔王以外にも、そういったデザインはあります。ブウ編で登場した、暗黒魔界の王ダーブラです。「暗黒魔界の王」ですので、やはりイメージとしては普通は、大きな角が威圧的なキャラデザをしそうな所です。実際、ダーブラには角が生えているのですが、デザイン的にはオーソドックスとはいえません。その角は親指の半分程度の大きさで、大きく尖った耳や大きなアゴの方が目を引くようなデザインになっているのです。角を付けないのならまだしも、わざわざそんなこじんまりとした角を付けている辺り、かなり意図的に非オーソドックスを狙ってデザインしたのではないでしょうか。


鳥山明氏はドラゴンボールを執筆する前には、国民的ブームを引き起こしたギャグ漫画『Dr.スランプ』を執筆していましたし、ドラゴンボールも、序盤はかなりコメディタッチでギャグ漫画に近い作品です。コメディやギャグは、意表を突いてナンボといった面があると思います。序盤のキャラでは、武術の達人で仙人である亀仙人は、肩書きに似合わずサングラス姿ですし、この辺りは半ばギャグとして、意表を突いたデザインをしている部分があったのだろうと思います。

その、デザインに意表を突く精神が、ちょくちょくシリアスなキャラクターにも表れていて、それがピッコロ大魔王の丸いシルエットだったり、ダーブラの小さな角だったりするのではないかと感じます。言わすと知れた名作ドラゴンボールは、そういった細かいところに注目すると、まだまだ色々面白い部分が見えてくるのではないでしょうか。