柿舞わす

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「絵柄が古い」と言われた時の考え方について

「絵柄が古い」というのは、漫画・アニメのイラスト、中でも特に美少女系のイラストへの批評としてはよく聞く表現です。しかし、この表現、よく使われている割に、何を意図しているのかが分かりにくい言葉です。絵が古いと言われても、何をどうしたら良いのか、言われた方は分かりませんし、そもそも具体性が低いです。

私は、この「絵柄が古い」という言い回しについては、3通りの意味合いがあると思っています。それは、「現在流行している特徴を持っていない」という意味、「以前流行していた特長を持っている」という意味、「具体的に指摘しづらいが好みに合わない」という意味の三つです。


そもそも【絵柄の流行】とは一体何でしょうか。それについて、私は以下のような流れで絵柄の流行が起こると思っています。

まず始めに、一つの漫画・アニメ等の作品の流行が起こります。どんな作品にも絵柄の特徴というものがあり、絵柄の特徴というのは、魅力を含みながらも、人を遠ざける「アク」となり得る、諸刃の剣です。流行作品も、当然その「魅力」と「アク」とを持ち合わせています。

作品の読者の多くは、最初は絵柄の「アク」から作品をある程度敬遠するのですが、作品のストーリー等が面白かったり話題性があったりすれば、その「アク」をさほど気にせず受け入れます。そして、その流行作品を読んでいるうちに、作品の絵柄の特徴に慣れ、その絵柄の「アク」を「アク」と感じなくなります。その作品の絵柄特有の魅力だけに強く惹かれるようになるのです。

そのうち、その作品に似た絵柄の作品の「アク」も、受け入れるようになっていきます。そして、作り手の方も特徴の流行に対応したりという流れが出来ると、【絵柄の流行】が発生します。絵柄の流行は発生後、読者の目の慣れと共に、特徴自体が増幅し、傍から見ると「アク」と感じる面は時間経過と共に強くなります。

しかし、全ての人が、流行の「アク」を受け入れた訳ではありません。別の特徴の作品を待ちわびる事になります。そして、流行とは違うけれど魅力的な絵柄の作品が注目を浴び始めると、その作品を広め始めます。流行の絵柄の「魅力」にも、そのうち皆飽きが来はじめますので、次第に流行は別の絵柄に置き換わっていきます。そのうち、以前流行した絵柄の「アク」が目だって見えるようになり、以前の絵柄の流行は終焉に向かいます。


そのように考えると、先に言ったとおり、「絵柄が古い」は「現在流行している特徴を持っていない」、つまり【現在流行している絵柄の「魅力」を持っていない】という場合と、「以前流行していた特長を持っている」、つまり【既に流行が終焉した絵柄の「アク」が目につく】という場合に分かれます。勿論その両方の意味合いを含むのが基本だと思いますが、意味合いに2つの成分があると捉えると、言われた側としては分析しやすいと思います。

絵柄のアクというのも、ある種、時代的に作画技術が洗練されていない為に出ることもあります。洗練されていない事で、ある種荒削りな魅力が現れることもありますので、先に述べた流行発生の図式に全ての流行が当てはまる訳ではありません。ただ、二面性自体は意識しておくと分析しやすいことでしょう。

そして、もう一つ意味合いがあると言いました。「具体的に指摘しづらいが好みに合わない」という意味です。これは、批評者が具体的な表現で絵柄の欠点を説明できない場合に、とりあえず「絵柄が古い」という表現が用いられがちだということです。「絵柄が古い」というのは主観的な表現の割に、妙に説得力を持っているような雰囲気があり、ひとまず手ごろな表現として用いられやすいという事です。若干批判的な言い方をすれば、「絵柄が古い」と言っておけば、批評者は通ぶることが出来るのです。


当然ながら、絵柄の流行も、作品のジャンルや媒体によって同じ時代でもかなり違った様相を示すものです。そして、あくまで「絵柄の特徴」という定量的な観測のしづらい事柄に関することですので、先に述べた通り、主観的な意見でしかありません。

描き手としては、あくまで意見(しかも多くの場合、描き手ではない素人の意見)として受け止めつつも、どういった意図での表現なのか考える上では、絵柄の特徴に関する「魅力」と「アク」という二面性から捉えてみるのが良いのではないかと思っています。