柿舞わす

このブログは、ひらう子のブログです。

貯蓄のある人の「ぜいたく不足」は運動不足と同じくらい危険だと思う

久々の記事です。何を書いたものか迷いましたが今回は経済寄りのテーマで…。


バブルがはじけてから日本はずっと不況に見舞われています。今の若者のほとんどは、好景気というものをろくに知りません。そして、景気回復が出来ていないどころか、不況の度合いはますます酷くなっていっているという様相です。

日本の長引く不況の原因についての原因を挙げていくと、海外の安い労働力が日本人の仕事を多方面から奪っていることや、日本の企業が組織として大きくなりすぎたが為に全体的に腰が重くなってしまったことなど、色々な要因を挙げる人がいるとは思います。

その中でも、壮年~高齢者層が収入の多くを貯蓄に回してしまい、経済が回らなくなって格差がどんどん大きくなっているというのは、多くの人が指摘する要因だと思います。


実際に、総務省統計局の【家計調査報告(貯蓄・負債編)】から、世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高の推移を見てみると、若年層の貧困化がはっきりと見えてきます。40歳未満の純貯蓄額は2007年で-183万円ですが、2016年で-524万円と、かなり酷くなっています。明らかに若い世代が貧乏になっていっているのがよく分かります。50歳以上の年代の貯蓄額は大きく変わっていませんので、少子高齢化を鑑みても、高齢者世代の貯蓄により経済が停滞しているという指摘は、充分に合理的な意見だと思います
(勿論高齢者同士の格差も広がっているという一面はありますので、高齢者の全員が貯蓄で経済を停滞させているということは出来ませんが…)
統計局ホームページ/家計調査報告(貯蓄・負債編)−平成28年(2016年)平均結果速報−(二人以上の世帯)

そんな訳で、近年、ネットで若年層による「高齢者の節約」を非難する意見を見ることが多くなりました。年代による経済格差がこれから更に拡大すれば、高齢者に批判的な意見が更に増えるであろう事が推測されます。


さて、それでは、ある程度資産のある高齢者に「金を使え」と言ったとして、それで使うかというと、恐らくそう簡単にはいかないでしょう。貯蓄をする高齢者というのは、全体的に経済が停滞している中、お金を使うという事に不安を感じている人が多い筈です。ある程度お金があっても、「ぜいたく」は不安なものです。お金を使うことが社会の為になるといっても、それで自身が不安になるのであれば、中々積極的にお金を使う人はいないと思います。


ただ、本当に「ぜいたくをしない」という事は安全なのでしょうか。私は、むしろ「ぜいたくをしない」というのはかなり危険なことだと思うのです


ぜいたくをするという行為について少し考えてみます。ぜいたくをするというのは、つまり、自分の好きなことにお金を使うということです。好きなことにお金を使うことは、同じものを好きな人との出会いを生みます。また、例えば洋服にお金を使うなら洋服屋や仕立て屋、といったように、その「好きなこと」を支える人たちにお金を回すことになります。そこでも人との出会いが生まれます。

人間は、人との出会いが少なくなると、色々な意味で不安定になります。精神的にも落ち込むことが多くなりますし、考え方が凝り固まったり、偏った情報源からの情報を不用意に信じ込んでしまったりという事にも繋がります。また、人と出会う機会が減ると、新たに出会った人が良い人か悪い人かを判別する勘が鈍っていきます

「独居老人が詐欺に遭う」という話はよく聞きます。人は、人とのふれあいや出会いが足りなくなると、ちょっとした事で騙されやすくなるのです。ある意味構図としては、運動不足と同じです。普段から運動して体に刺激を与えている人に比べて運動不足の人がちょっとしたことで体調を崩してしまうと同じで、人との交流が停滞している人はちょっとした事で詐欺に遭うようになりますし、詐欺師を見抜く力も衰えます。

そして、少し世知辛い言い方にはなりますが、人との良質な出会いを増やすには、ある程度お金を使うしかないのです。特に貯蓄のある人というのは詐欺師にも狙われやすいので、人との出会いを増やすべく、自分の好きなことへの投資は積極的に行うべきなのです。


この、ぜいたくをする事で犯罪から身を守るという考え方には、人との出会いを増やすという観点だけでなく、もう一つの側面があります。それは、ぜいたくにより、金額の大きさに対する直感を磨くという観点です。

平たく言えば、20万円の買い物をよくする人は、ほとんどしない人に比べて、20万円というのがどの位の額かよく分かっているということです。例えばカメラに普段からお金を使っている人なら、「20万円あれば○○のカメラのレンズが買えて、こんな写真が撮れるようになるなあ」といった想像が出来ます。そうなると、100万円という額も、20万円の5倍という事で、ある程度想像する手がかりが出来ます。

しかし、普段10万円単位の買い物をする事がない人は、100万円といわれてもどのくらいの事が出来る金額なのかが分かりません。そういう人は、例えば、ふと安価な壷を100万円で売りつける霊感商法の詐欺師に「100万円なんて大した額ではないです」といった事を言われた際に、金額の大きさからそれを拒否するという事が難しくなります。普段お金を使わないと、金銭感覚を相手に誘導されてしまいやすくなり、詐欺をシャットアウトする事が出来なくなります


詐欺に遭うという事は、貯めた資産を失うということに留まりません。自身や身内が更なる犯罪に巻き込まれたり、場合によってはそのまま脅迫に遭って自らが犯罪に加担する事になる可能性すらあります。そういったことを考えていくと、お金があるのにろくに使わないというのは、非常に危険なことと言えるでしょう。少しずつでも良いので、適度なぜいたくをして、人との出会いを増やしたり、金銭的な勘を磨いていく事が、自らの安全を守ることに繋がるのです

近年の年代による経済格差の拡大は、「老人が自分の為だけ考えて蓄財をする事が、社会に害をなしている」という構図で攻撃的に語られる事が多いです。しかし、一つの考え方として、高齢者が自分の為と思ってやっている貯蓄は、寧ろ複数の意味で、破滅的な危険を呼び寄せてしまう」という見方も出来ると思い、このブログ記事にしたためてみたのでした。